この世には不思議なことなど何もないのだよ―古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。
東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。
娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。
文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。(アマゾンより引用)
怪奇小説にみせかけたミステリー小説
物語は主人公である関口巽が、
古くからの知り合いである中禅寺秋彦を訪ねるところから始まります。
二人の話の中に出てきたとある産婦人科医院を経営する久遠寺家の奇怪、
その怪異には二人の学生時代の先輩である藤野牧朗の失踪に関係していた。
いつの間にか巻き込まれていく関口は怪異の謎を解き明かすべく、
これまた古くからの友人で不思議な能力を駆使し探偵をする榎木津礼二郎や警察官をしている木場修太郎、
中禅寺の妹で編集記者の敦子を巻き込み物語は進んでいく。
怪しい魅力を放つキャラクター
私が印象に残っているシーンは、物語のキーである久遠寺涼子が関口に助けを求めるところです。
作中の関口は精神的にとても不安定な作家で見た目もいいわけでもない挙動不審なところがあります。
そんな関口に対して怪しい魅力を発する涼子のコントラストは、
関口と涼子の過去の出来事へも交じり合いどこか美しくも不安を増長し、
読み続けるのが怖くなってくるような感覚を覚えます。
しかし怪異の謎、登場人物たちの破天荒さは続きを読まずにはいられない。
この作品を世に出すために新しく新人賞まで設立
姑獲鳥の夏の作者、京極夏彦といえばかなり有名な作家です。
その京極夏彦のデビュー作にして今なお続く百鬼夜行シリーズの第一作であるこの姑獲鳥の夏は、
京極夏彦が暇つぶしとして描いた作品なのですが、
それとは思えないほどの完成された不思議な美しさをもつ作品です。
この作品を世に出すために新しく新人賞を設立までしています。
妖怪をテーマとした怪奇小説とみせかけ、
妖怪を否定したミステリー小説であるこの独特の作品は、
読み終わった後しばらく小説の世界から帰ってこられない魅力を持っています。