鬼から人間になっていく?おすすめ怪奇小説「鬼の橋」を紹介してみる

スポンサーリンク

平安時代初期に実在し、数多くの不思議な伝説が語り伝えられる人物小野篁
なかでも、夜な夜な井戸を通って冥府へと通い、閻魔大王のもとで働いていた話はよく知られている。
その篁の少年時代を描いた、傑作ファンタジー(アマゾンより引用)

小野篁という人物と鬼の橋

この物語の主人公は、平安時代初期に実在した小野篁という人物がモデルになっています。
小野篁には、夜な夜な地獄に通っていたなどどいう不思議な逸話が残っています。

この物語には、少年から大人へなる過程での葛藤、そして人間としての成長が鮮やかに描かれています。
己の苦しみと共に生きる様々な人物が「橋」を中心にして関わり、物語をより魅力的に彩っています。

ジャンルは児童文学に入るけれど、内容は決して子供向けに限定されないから抵抗はないと思います。

むしろ純粋に人を想う気持ちや、ひたむきに努力することを忘れかけている私たち大人にぴったりだと思う。

少年から大人へと変わるきっかけ

物語のはじまりは、少年篁が不注意で妹を亡くし、失意のさなかにあるところから始まります。
そんな彼は妹を亡くした井戸から、あの世とこの世を行き来する世界に迷い込んでしまいます。
少年篁は、妹を死なせてしまったという自責の念から自身も死の誘惑に憑りつかれているようでした。

そこで死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂や、坂上田村麻呂に角を切られたという鬼も登場します。

少年篁は坂上田村麻呂や鬼と関わるうちに彼らもまた傷つき、葛藤しているということを知ったのです。
少年篁は彼らと関わることで、少しずつ変わり始めていました。

本当の強さとは

彼は一人の少女とも出会います。
それがみなしごの阿子那(あこな)です。
少年篁は阿子那の力になりたいと思っていましたが、自分より非力なはずのその少女のたくましさに圧倒されます。
「そのままでいい」
それが少女の言葉でした。
少年篁は弱い自分を素直に受け入れ、自分だけではなく周りの人を守ることのできる強さを手に入れていくのでした。

私たちは大人になる過程で葛藤し、傷つくことを経験します。
それでも生き、立ち上がるために必要な「気づき」をこの物語は静かに語りかけてくれているようです。
人生に悩み疲れ果てたとき。
この小説は心を強く持てるきっかけになってくれると思います。