「十二国記」の前日譚、ホラー小説『魔性の子』を紹介してみる

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十二国記』との関係


まず『魔性の子』を語る上で外せないのが同作者のファンタジー小説十二国記シリーズ』です。

作者は『十二国記シリーズ』の小野不由美先生。

十二国記シリーズ』のあとがきで、魔性の子が『十二国記シリーズ』の前日譚にあたると述べられています。
僕は『十二国記シリーズ』のファンで、『十二国記』から『魔性の子』を知りました。

新潮文庫で『魔性の子』がEpisode-0巻として刊行されたとき、
最初はシリーズの内容を補完するためのスピンオフみたいな扱いなのだろうと思っていたけど、
そんなことはなかった。『魔性の子』はまさに原点回帰でした。

読者の心をえぐる描写

シリーズの作者である小野不由美さんは、
ずっとファンタジー小説を書いていると思っていたのは、僕の勘違いでした。

彼女は生粋のホラー作家です。

ちりばめられた言葉の数々、細かい心理描写、何より人間の心をえぐるような出来事の連続。

恐怖に相対した人々がどのように混乱し、無秩序な状態へと堕ちていくのか。

物語が進むにつれて恐怖の核心へと近づいていくのだが、
どうやって、ただの人間である主人公は向き合っていくのか。


小野不由美さんの描く主人公の一番の魅力は、
劇中において悟りの域に近い心理状態まで向かっていくことだと思う。

あらゆる困難に相対した主人公が最後に切り開く決心は、
一読者として、天晴とほめたくなるくらい見事です。

十二国記シリーズ』もおすすめ

もちろんこれだけで終わりません。『魔性の子』を読み終えたら、今度は『十二国記シリーズ』もおすすめ。

その1冊に『魔性の子』の裏側のストーリーがあるので、
続けて読むことでさらに世界観に没入することができます。

何度も読み返すことで、小説の表と裏を行き来するのも面白さの一つ。

闇の底をのぞき込むような感覚で読んでみると面白い。

彼女の描くキャラクターたちと同じ。
関わろうとしなければ、恐怖も何も起きないはずなのだ。


でも関わろうとしてしまう。それがたとえ死につながることだとしても、
人間は関わるのをやめようとはしない。

そういう人間性までも見事に描いた作品とは、あまり出会わないように思う。
もし本屋で『魔性の子』を見つけたら、まず手に取って読んでほしい。