【異形】本格ミステリー小説『ネジ式ザゼツキー』を紹介してみる

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貪欲なミステリーマニアを唸らせる、メタっぽい本格ミステリ

「もはやトリックは出尽くした」と言われたのが意外にも戦後くらいです
その中で、江戸川乱歩は、新たなミステリーの模索をして、幻影城を築き後進の育成にも努めました。

一気に生まれ、一気に成熟したミステリー会のため、
”さらに新しいものを!”と貪欲な読者のために、貪欲な作者が作り続けるうちに、
メタミステリーなる奇妙なミステリーが生まれます。

京極夏彦森博嗣などが手掛ける小説がそうです。新鋭はより奇妙な味の作品を世に投じてます。
しかしそれが過ぎるために純粋なミステリーファンは「こんなにミステリーじゃない」という気持ちに駆られます。

そこにひとつの作品「ネジ式ザゼツキー」が生まれました。

作者は鬼才・島田荘司先生。代表シリーズである「御手洗潔ミステリー」。


常識を覆す規模で描かれるため、もはや”メタ”の部類に入るのではと思われるけど、
それでもミステリーの範疇に収め、ぐっと感動的な人間ドラマも演出しています。

物足りなさを感じていたミステリーマニアも唸る作品である、と僕はは自信をもって推薦します。

1000枚規模の大長編だけど、ひとつの殺人事件を軸に物語は展開。


とかく長編ミステリーとなると、ひとつのメイントリックを軸に、
複数の殺人事件が起こり、そこにちょこちょこと細かな謎が付随している、という構図が多いです。

ドラマ性をどんと盛り上げるためにも(物騒ですが)殺人事件が起こるというのは、
読み手の興味もひくので、作りやすい演出だけど。


「ネジ式ザゼツキー」では連続殺人事件は起こりません。
単一の殺人事件にまつわる大いなる謎を、探偵ではなく、精神分析医として御手洗潔が解き明かしていきます。

真相に辿りつくまでに、数々の謎が浮かび上がり、それを解くとまた新たな謎が登場する……という構図。

真相に近づいたと思いきやまた遠ざかりを繰り返しつつ、
全容がだんだん見えてくるのはミステリーとして正しい面白さだと思います。

ミステリーの楽しさが存分に味わえます。

捜索範囲は地球規模! 恐らく世界最大スケールのミステリーです。


ミステリーにおいて、事件が発生し、それを捜索する範囲というのは、
被害者の周辺や町内、さらには被害者のゆかりの場所というのが相場です。


私たちの実生活を想像すると、そういう身近なところから謎を追うだけでもすごい根気もいるし、
難しい大変な捜査だと感じる。

「ネジ式ザゼツキー」の一つの謎、”タンジール蜜柑共和国”の場所については世界規模で捜索します。

ミステリー初期の作品から目を通しているけど、
これほど広範な捜索劇は見たことがないです。驚愕。

その謎に迫るための手がかりも、
奇妙なファンタジー小説を題材に緻密に矛盾を紐解いていきます。


この謎解きの過程はまさに驚きの連続。

”殺人”という刺激に頼っていたミステリーに、
”謎解き”という基本的な要素で読者を楽しませてくれます。

これ以外にもまだまだ語りきれない、楽しめる要素が満載の「ネジ式ザゼツキー」は
面白いミステリーを求める方にお勧めの作品です!