聖戦の系譜」の物語全体に影響を及ぼしたヒロイン、それがディアドラです。
彼女はヴェルダン王国の深い森で、外の世界との接触を断った環境に育ちました。
そうしなければ、外界と接触を持ってしまったら、世界に災いが降りかかる。ディアドラの身にはそんな戒めがかけられていました。
けれど運命的に出会ってしまったシグルドが忘れられず、そしてそれはシグルドにとっても同じで、二人は恐れを越えて結婚します。
しかし、ディアドラの身は暗黒教団に狙われていました。それは彼女が、暗黒神ロプトウスの血を引く世界でたった二人の人間のひとりだったため。
暗黒教団は、彼女とそのもうひとりとを結ばせて、生まれる子供に暗黒神を降ろそうとしているのでした。
暗黒教団にさらわれたディアドラは、全ての記憶を消され、何も知らないまま、教団が仕組んだ結婚をして子供を授かります。
それが、物語後半の核になっていきます。
ディアドラは、数奇過ぎる運命に生きたキャラクターで、その運命の重さは想像を絶します。
彼女がもし、戒めを守って、シグルドについていくことを選ばなかったら、この物語の悲劇である暗黒神の復活は起こらなかったでしょう。
しかも、実はディアドラの出生自体も、彼女の母が戒めを守らなかったことによるものなのです。
ディアドラの母が掟を破って森を飛び出さなかったら、ディアドラも、もうひとりの暗黒神の血を引く人間も、この世に生を受けることはなかったのです。
正しいか正しくないかだけでは計れない、複雑で悲しい背景です。
その連鎖は、時を経て、子供たちの時代で解決を待つことになります。